新しい外国人技能実習制度に介護が追加。介護人材不足の一助となるか!?

超高齢社会に突入した日本では、介護人材不足が慢性化。にもかかわらず、団塊世代が後期高齢者となる2025年に向けて、さらに介護需要が高まる見通しだ。

政府が進める介護人材を確保する案のひとつに、外国人技能実習生に介護現場を支えてもらおうという動きがある。2017年11月1日、技能実習法に基づく新たな外国人技能実習制度が施行されたが、これに合わせて対象職種に介護が追加されたのだ。はたしてこれは、介護の人材不足解決に有効な手立てとなるのだろうか?

 

外国人技能実習生制度とは?

外国人技能実習生制度とは?

外国人技能実習制度は、開発途上国の人材を受け入れて、先進国である日本の技術や知識を修得してもらい、母国の経済発展を担う「人づくり」に協力していこうという制度。この制度を利用して来日する人たちは「技能実習生」と呼ばれ、きちんと在留資格を与えられている。

今回、施行された外国人技能実習制度では、制度が正しく実行されるよう「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」を整備した。外国人の技能実習生が過酷な労働環境に置かれないよう、実習先の監視を行なう「外国人技能実習機構」を新設。また、技能実習が適正に実施されるよう、実習生の受け入れは国の許可を受けた監理団体が行い、技能実習計画の認定制なども新たに導入した。このほか、技能実習生を保護するために、人権侵害に対する罰則や、技能実習生の相談・通報の窓口なども整備されている。

さらに、優良な監理団体や実習実施者として認められれば、実習期間を3年から最長5年まで延長し、受け入れ人数枠を拡大できるなど、制度の柔軟化も図っている。これらの見直しを行ったことで、海外から訪日する技能実習生が増えていくことが予想される。

 

海外からの技能実習生やEPAが担う日本の介護

海外からの技能実習生やEPAが担う日本の介護

外国人技能実習に加えられた介護職種の基本的な考えは、あくまで「技能移転」とされている。来日した外国人たちの母国が、今後経済的に発展した後に高齢化社会を迎えた場合に備えて日本の介護の知識と技術を習得してもらう、というのが建前だ。しかし実際は、これから急ピッチで増える介護需給をふまえたわが国のための取り組みだということは見て取れるだろう。

これまでも介護人材の確保のため、経済連携協定(EPA)に基づく外国人介護福祉候補者の受け入れが行われてきた。これは、インドネシア、フィリピン、ベトナムから来日した人が、働きながら介護福祉の資格取得を目指すというものだ。これら3カ国からの受け入れについても、看護・介護の人材不足に対応したものではなく、相手国からの要望に応じた「経済活動の連携強化が目的」という名目になっている。とはいえ、介護需要を担う大切な人材には変わりない。EPAの受け入れ先は、特別養護老人ホームや老人保健施設などに限られていたが、日本の介護福祉士試験合格者に限っては訪問介護にも従事できるようになった。

 

日本語の修得が課題

日本語の修得が課題

介護業種で受け入れる技能実習生に対しては、固有の要件が各種設定されている。中でも課題となるのが日本語能力だろう。外国人技能実習生は、技能実習を行なう指導員や介護施設の利用者たちと円滑なコミュニケーションを図れるようにならなくてはならず、一定水準以上の日本語能力が求められている。

外国人技能実習生は日本に入国すると、1年目に技能実習1号、2年目と3年目は技能実習2号と呼ばれる。1年目(技能実習1号)は、基本的な日本語を理解することができる「日本語能力試験N4」に合格しているか、これと同等以上の能力が求められる。2年目以降(技能実習2号)も働くならば、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる「N3」以上の試験に合格しなければならない。

 

受け入れ施設に求められること

受け入れ施設に求められること

外国人技能実習制度で取り入れられているほかの職種のなかでも、介護職種は高い日本語能力が必要とされている。EPAの場合は、入国時に求められるコミュニケーション能力は、基本的な日本語をある程度理解することができる「日本語能力検定N5」以上。また、訪日後は半年間の研修を経てから就労に着く。それに対して、技能実習制度の介護職種では、入国後の研修期間はわずか2カ月間しかない。

介護職種の技能実習生を受け入れる施設が、これから急速に進んでいく日本の超高齢社会をふまえて、大切な人材として育成を重視してくれることを願っている。

 

2018年2月1日掲載