車いすで空の旅。航空会社が独自の車いすを導入

飛行機を使って旅をする楽しさは格別なもの。その楽しさは車いすを利用する人でも味わうことができる。しかし、機内の通路は一般的な車いすが通れるほどの幅がなく、乗ったまま機内に乗り入れることはできない。このため、自分の車いすは搭乗手続きをするカウンターなどで手荷物として預けなくてはならない。

搭乗手続きカウンターで自分の車いすを預けたら、そこから搭乗口までは航空会社が用意する車いすを利用するのだが、国内大手航空会社のANA(全日空)やJAL(日本航空)では、乗客がより快適に利用できるように工夫した車いすを国内の空港に導入している。

 

車いすで飛行機に搭乗するまでの流れ

車いすで飛行機に搭乗するまでの流れ

車いすを利用する人が飛行機を利用するときは、搭乗手続きの際に航空会社が用意する車いすに乗り換えるのだが、その車いすはこれまで金属製のタイプが使われていた。そのため保安検査場を通過するときに金属探知機が反応してしまい、ボディチェックなどの再検査を受けなくてはいけなかった。そして、チェックに時間がかかるといった負担がかかっていた。

この問題を解決するために、ANAやJALでは金属探知機に反応しない、非金属製の車いすを導入している。それぞれのこだわりが詰まった車いすを見比べてみよう。

 

ANAは樹脂製の車いすを導入

ANAは樹脂製の車いすを導入

ANAでは、車いすメーカーと共同開発した樹脂製の車いす「morph(モルフ)」を導入している。骨組み、車輪、ベアリングのすべてが樹脂でできたこの車いすは、金属製車いすに匹敵する強度がありながら、保安検査場で金属探知機に反応することなくスムーズに通過できることを可能にした。

車いすのメイン車輪は着脱式で、取り外せば機内の通路を通れるようになり、途中で乗り換えることなく、座席横まで乗っていくことができる。また、一般的な金属の車いすの冷たさを払拭する、丸みを帯びた温かみのあるフォルムや配色など、デザインにもこだわり抜いた。なお、この車いすは高齢者や杖を必要とする人など、歩行が不自由で広い空港内を歩いて移動する人なども利用することができる。

この車いすは現在約200台が導入されており、2018年度までに全国の空港に約400台の配備を目指している。

 

JALが導入したのは木製の車いす

JALが導入したのは木製の車いす

一方、JALは福祉機器メーカーと共同開発した、木製の車いすを導入している。この車いすは保安検査場をスムーズに通過できることはもちろんだが、ほかにも快適性を考慮したさまざまな配慮が盛り込まれている。従来の車いすは、機内の通路を通る際に外輪を外して小輪のみで機内を移動する必要があったが、この車いすは、車輪ではなく肘掛を外せば機内まで入ることができる。車輪を着脱するときの乗客のストレスを減らせるうえ、走行が安定して安心して利用できることが利点だ。

また、座面の前側のクッションを厚めにして上体が崩れにくい仕様になっており、ハイヒールを履いた人でも足元が安定するようフットレストに穴をあけるなど、細やかな配慮がされている。車いすの主要パーツは、丈夫で美しい白樺の木を採用し、木の温もりを感じられるようなデザインになっている。さらに、座面の下に手荷物を収納できるスペースを確保するなど、使いやすさとデザインが調和していることも特徴だろう。

木製の車いすは、現在140台導入されており、2018年度までに250台が全国の空港へ配備される予定だ。

 

搭乗前に確認しておきたいこと

搭乗前に確認しておきたいこと

これらの車いすの利用は、ANAなら空港のチェックインカウンターに向かえばそのまま手続きが行える。車いすの種類や搭乗便、利用する空港によっては、搭乗口まで自分の車いすを利用することもできるので、カウンターで相談してみよう。

JALの場合は、新千歳、羽田、成田、中部、伊丹、福岡、那覇空港なら専用カウンターで、その他の空港で木製イスが導入されている空港なら有人カウンターもしくは、チェックインカウンターで貸し出し申し込みができる。

こういった航空会社が貸し出す車いすは、空港に着いてから利用の申し込みができるが、あらかじめ予約や問い合わせをしておいたほうが安心だ。例えば、ガススプリング式など、車いすの仕様によっては書類が必要になるなど、航空会社によって規定があるからだ。申し込みの手続方法のほかに、搭乗までの流れがどのようになっているかなどの詳細も確認しておけば、よりスムーズに空の旅を楽しむことができるだろう。

 

2018年4月16日掲載