介護保険制度は3年ごとに見直され、前回は2015年に改定が行われた。日本の高齢化問題が進むなか、制度を持続可能とするために毎回さまざまな見直しが行われている。次回の介護保険制度改定は2018年。この改定で、保険制度は大きく変わろうとしている。

まずは、前回の改定でどのような変化があったのかおさらいし、そこから次回の改定でどのような見直しが行われるのか見ていこう。

 

前回の改定で大きく変わった3つのポイント

2015年に大きく変わった介護保険制度は以下の3つがある。まず、一定以上の所得がある高齢者は介護サービス費が自己負担2割に増えたこと。働いていたり、何かで収入を得ていて生活に余裕のある高齢者は、自己負担額を増やすという改定だ。

次が、特別養護老人ホームに長期入所できる対象者を変更したこと。特養と呼ばれるこれらの施設は、症状が重く、手厚い看護が必要な人に向けた便利な施設。しかし、人気が集中して利用したくても空きがなく、入所を待たされる状況が起きた。そのため、介護3以上でないと入居できない入居制限を設けたわけだ。ただし、要介護1や2の人でも、認知症や、知的障害、精神障害などを伴い日常生活に支障をきたすなど、やむをえない事情があれば、特例入所が検討される。

そして3つめが、要支援1、2の介護サービスが国から市町村に移行されたこと。2015年の改定時、要支援者の予防訪問介護サービスや予防通所介護サービスは介護保険の対象外となり、市町村の自治体が介護予防サービスを担うことになった。その後、自治体ごとに地域包括ケアシステムの構築が進められている。これらの3点が、前回の改定の大きなポイントだろう。

 

2018年の改定後は、要介護1、2のサービスは「継続」

2017年2月現在、要支援、要介護に認定されている国民総数は630万人。さらなる高齢者増加に向け、軽度者に対するサービスの縮小が進んでいる。すでに要支援1、2でデイサービスや訪問介護を利用している人は、2017年度末までに介護保険から外れ、自治体の地域支援事業へと移行が決定している。

2018年の法改定では、要介護1、2も生活援助サービスを介護保険から除外するという案があった。しかし、これは見送りとなり、従来通り「継続」されることになっている。介護1、2の認定者でサービスを利用している人にとっては朗報といえるだろう。

しかし今回、生活援助サービスの見直し案が出た要因は、ホームヘルパーが提供する、家事や調理などの家事を行うサービスを、家政婦感覚で使う利用者が多いという指摘と、高齢者の増加に伴い介護職員が不足し、安定したサービス供給が難しいことが背景にある。今回は見送りとなったが、今後も軽度者向けの生活援助サービスについては議論の対象となるだろう。

 

現役並み所得の人は介護保険サービスの自己負担が3割に

2015年の改定で、一定所得がある人は介護保険の自己負担が2割になったが、2018年の改定後は、「現役並みの所得」がある人は負担が3割に。対象となるのは、単身生活で年金収入とその他の収入の合計所得が340万円、年金収入のみなら344万円以上の人。夫婦世帯の場合は463万円以上。2018年8月から施行されることが決まっている。

ただし、介護費用が高額になった場合は、所得に応じて上限額を設けた「高額介護サービス費」制度があるので、超過分の払い戻しが受けられる。この上限も8月から上限額が4万4400円へと統一される。

 

福祉用具のレンタル価格に上限を設定

今回の改定で、2018年10月より福祉用具レンタル価格の上限制がスタートする。在宅で生活する高齢者には、福祉用具のレンタルを利用している人が多いだろう。レンタル用品は自由価格制だが、事業者によって価格差があり、同じものを使っているのに利用者によっては極端に高額なレンタル料を支払うケースがあった。

それが今後は自由価格制のもとに、用具ごとに全国平均のレンタル料に「1標準偏差」を加えた値が上限とされた。標準偏差とは、統計を取ったときのデータのバラツキの大きさを示すもので、平均価格が同じでも価格差にバラツキがある場合は標準偏差の値が大きくなる。つまり「1標準偏差」はバラツキが小さいので、レンタル料は全国平均価格より価格差を少なく設定しなければならない。

自由価格制度ではあるが、極端にレンタル料が高いものは給付の対象外にされるため、事業者が介護保険サービスによる用具レンタルを続けるには、レンタル料を上限価格まで引き下げなくてはいけない。このことで極端に高いレンタル料を是正し、利用者の負担を少なくすることを目的としている。

 

2017年7月14日掲載