自治体独自の見守り&おたすけサービス

高齢者が住み慣れた場所で安心して暮らせる環境づくりのひとつに、自治体が高齢者を見守り、生活をサポートする取り組みがある。これは、見守り希望者が自治体に申請をすると、ボランティアや民間組織等のスタッフが対象の高齢者に対して日常的に声がけをしたり、定期的に自宅訪問や電話連絡をしたりして安否確認してくれるというもの。ほかにも、配食サービスなど栄養面を考えた食事のサポートもしている。

また、自治体によっては、介護している家族がリフレッシュできる支援もある。自治体とその他の組織が協力して見守る活動を広げる、独自の方法で支援するなど、地域ごとにさまざまな取り組みが行われている。

 

一般的な自治体のサポート

一般的な自治体のサポート

多くの自治体が行っている高齢者向けのサービスは、一人暮らしの高齢者や、高齢者だけの世帯の見守り活動だ。例えば国分寺市(東京都)では、65歳以上のひとり暮らしまたは高齢者のみの世帯を対象に、自宅を訪問して様子を確認している。祝日や年末年始を除いた、月曜日から土曜日の9時から17時までの間に、週1回、1時間ほどの目安でサービスを利用でき、対象者の話し相手になったり散歩や買い物に付き添ったり、また困りごとがあれば専門機関への橋渡しをサポートする。

配食サービス事業を行う自治体も多い。春日部市(埼玉県)では、おおむね65歳以上の一人暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯、または身体的な障がいがある人など、調理が難しい人を対象に配食サービスを行っている。365日、年中無休で利用でき、1食につき400円。1日昼食・夕食の2回、栄養バランスのとれた食事を家まで届けてくれる。食事を届けるときや容器を回収する際に異常があれば、関係機関に連絡するといった見守りの機能も兼ね備えている。

 

介護している家族が休養できるサポートも

介護している家族が休養できるサポートも

これらのサポートは一人暮らしの高齢者を対象としていることが多く、認知症高齢者を在宅介護しているケースでは家族に大きな負担がかかる。見守りを欠かすことができなければ、家族が体と心を休める時間などなかなか作れないからだ。そんな状況を配慮した自治体の支援活動がある。

尾道市(広島県)では、介護している家族に休養が必要なとき、「やすらぎ支援員」が訪問して高齢者を見守り、話し相手をする支援を実施している。1回につき原則日中に2時間程度を目安に、おおむね月2回ほど無料で利用できる。少しの時間だけ出かけたいときや、ちょっとだけ休養したいときにありがたいサポートだ。また、家族の困りごとの相談にも応じてくれ、相談相手がほしいときにも心強い。

北九州市(福岡県)でも、介護している家族が休息やリフレッシュ、買い物したいときに対象高齢者を見守り、話し相手をするサポーターを派遣している。こちらは、1時間30分あたり500円の利用料と別途サポーターの交通費が必要になるが、9時から20時までと遅めの時間まで利用できることが魅力だ。年末年始を除き、1日につき6時間まで利用でき、時間を分割することもできる。

 

おせち料理の配食も!?

おせち料理の配食も!?

これまで説明した自治体の支援は年末年始を除いたものが多い。ということは、高齢者世帯は年末に孤立しがちになる。そこで箕面市(大阪府)は、年末に一人暮らしの高齢者や高齢者世帯、障がい者だけの世帯を対象におせち料理の配食を行っている。少しでも正月気分を味わってもらいたいという気持ちをこめて、地域ボランティアが一軒ずつ訪れて手渡ししている。この配食の費用は「歳末たすけあい募金」の一部をあてており、本人の費用負担は3000円になっている。

同市では、70歳以上の一人暮らしで安否確認の必要な人に、週1回乳酸菌飲料を手渡しで届けているほか、在宅で3カ月以上寝たきり状態の人や、認知症・身体的な障がいがある人にボランティアが介護しやすく工夫した手作りねまき等を届けるなど、人との繋がりを感じさせる温かな支援事業を実施している。

 

新聞配達しながら見守り活動

新聞配達しながら見守り活動

荒川区(東京都)が発表する2017年10月現在の年齢別人口によると、同区の総人口21万4239人のうち23%以上が65歳以上。つまり3人に1人が高齢者となる。すでに区では、配食と見守りを組み合わせたサービスを実施するほか、区内8カ所に社会福祉等の有資格者と相談できる「高齢者みまもりステーション」を設置するなど、さまざまな支援事業を整備している。

これとは別に、自治体と荒川区新聞販売同業組合が協定を結んだ、ユニークな高齢者の見守り活動も展開している。これは、65歳以上の一人暮らしの高齢者(またはこれに準ずる世帯)を対象に、新聞配達員が配達時に様子を気にかけ、もし対象者に異変があれば新聞販売店経由で区などの緊急連絡先に通報がいくというシステム。通報があった場合は、区から安否確認をする。また、対象者は、朝日新聞、産経新聞、東京新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞のうち、いずれか1紙以上を定期購読していなければならない。

同区ではほかにも、宅急便会社、生協などの組合組織、医療組合等など、日常業務で地域を巡回する民間会社と協定を結び、多方面からのアプローチで地域の見守り活動を広げている。

 

2017年11月17日掲載