高齢者の火災を防ぐ、日常生活用具の給付

総務省消防庁の報道資料によると、平成28年1月~12月における住宅火災による死者は885人。このうち65歳以上の高齢者は619人で、前年よりも1.3%増加している。住宅火災による死者のおよそ70%を高齢者が占めていることになる。こうした高齢者の火災を防止する用具を、給付・貸与している自治体があることをご存知だろうか?

これは国が整備し、各自治体が主体となって行っている地域生活支援事業のうちのひとつ。高齢者や障害者等が円滑に日常生活を送れるように給付・貸与している、自立生活支援用具のなかに、火災防止に関わる用具が含まれている。

 

どんな防火対策用具を給付している?

どんな防火対策用具を給付している?

高齢者には可能な限り、在宅で日常生活を送りたい人がいるだろう。しかし、認知症等で心身機能が低下している高齢者は、調理などで使う火で火災を引き起こしてしまう恐れがある。こうした災害の防止対策として、65歳以上の高齢者に向けて火災警報器、自動消火器、電磁調理器を給付・貸与している自治体がある。

電磁調理器とは、ガスや火を使わないIH調理器のこと。IHクッキングヒーターとも呼ばれ、電気で調理するため、防火対策に役立てられる。万が一、火災になった場合には警報器で発見を早め、自動消火器で初期消火をし、大きな火災にならないための対策が考えられている。

 

対象となる高齢者

対象となる高齢者

これらの用具を給付・貸与の対象となるのは65歳以上の高齢者。ただし、自治体によって、ひとり暮らしであったり、低所得であったり、援護が必要などの補足が付けられている。

例えば大阪府大阪市では、火災警報器と自動消化器は、65歳以上の低所得で要介護1~5の高齢者、および防火への配慮が必要なひとり暮らし高齢者を対象に給付。電磁調理器は、65歳以上で防火等の配慮が必要なひとり暮らし高齢者を対象に給付と定めている。

また、愛知県高浜市では、火災報知器と自動消化器の給付する対象者を、おおむね65歳以上の所得税非課税のひとり暮らし高齢者等。電磁調理器は、おおむね65歳以上で心身機能の低下に伴い防火への配慮が必要なひとり暮らしの高齢者等としている。

 

電子レンジを給付するところも

電子レンジを給付するところも

電磁調理器のほかに電子レンジを給付品目に入れている自治体もある。例えば、岡山県倉敷市では、おおむね65歳のひとり暮らし高齢者を対象とした日常生活用具の給付に電子レンジが入っている。同県の井原市でも給付品目に電子レンジがあるが、こちらは、前年所得税が非課税の世帯に属する高齢者を対象としている。

また、東京都板橋区では、65歳以上で防火の配慮が必要なひとり暮らし、もしくは日中にひとり暮らしになる人に電磁調理器か電子レンジのどちらかを給付としている。

電磁調理器はコイルに電磁気を流して加熱するIH調理器であるため、IH対応の鍋やフライパンを用意するなど出費がかかる可能性も。電子レンジならその心配が解消される。また、惣菜などを温めるだけなら電子レンジのほうが使い勝手がいいだろう。

 

ガス漏れ対策まで考慮する自治体も

ガス漏れ対策まで考慮する自治体も

調理で火やガスを使わなくても、日々の暮らしでガスを使うシーンは多い。給湯器や風呂の湯沸かし、暖房機など、まったくガスを使わない生活に切り替えることは難しいだろう。そこで自治体によっては、日常生活用具の給付・貸与の品目に、ガス漏れ警報器を入れているところがある。

対象を65歳以上のひとり暮らしとしていたり、低所得世帯であるなど規定はあるが、介護保険サービス対象外でも利用できることはありがたい。高齢者の火災事故を未然に防ぐさまざまな自治体のサポートを、ぜひ活用してもらいたい。

2017年9月20日掲載