2021年、介護報酬は3年に1度の改定を行い、4月から実施されている。

今回の改定のポイントは、新型コロナウィルス感染症や大規模災害が発生する中で、「感染症や災害への対応力強化」を図るとともに、団塊の世代の全てが75歳以上となる2025年も見据えながら、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止の取組の推進」、「介護人材の確保・介護現場の革新」、「制度の安定性・持続可能性の確保」を図るものとされた。改定率は、+0.70%(うち、新型コロナウィルス感染症に対するための特例的な評価0.05%、9月まで)と小幅ながらプラス改定となった。

2021年度 介護報酬改定のポイント

介護報酬とは

そもそも、介護報酬とは、事業者が利用者(要介護者または要支援者)に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に支払われるサービス費用のことで、この報酬は、サービスごとに設定されており、各々基本的なサービス提供にかかる費用に加えて、サービス提供体制、利用者の状況等において加算・減算される仕組みとなっている。


5つの改定のポイント


1.感染症や災害への対応力強化

 感染症の発生及びまん延等に関する取組の徹底を求める「感染症対策の強化」、感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する「業務継続に向けた取組の強化」、災害対応において訓練等を実施することで地域住民の参加が得られるよう連携する「災害への地域と連携した対応の強化」、利用者が減少した通所介護等の報酬について、柔軟に事業所規模別の各区分の報酬単価による算定を可能とした「通所介護等の事業所規模別の報酬等に関する対応」が推進されている。


2.地域包括ケアシステムの推進

 住み慣れた地域において、利用者の尊厳を保持しつつ、必要なサービスが切れ目なく提供されるよう取組を推進すること」を目的に改定が行われた。具体的には、「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」「看取りへの対応の充実」「医療と介護の連携の推進」「在宅サービス、介護保険施設や高齢者住まいの機能・対応強化」「ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保」「地域の特性に応じたサービスの確保」となっている。


3.自立支援・重度化防止の取組の推進

 「制度の目的に沿って、質の評価やデータ活用を行いながら、科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供を推進」を目的とした改定が行われた。
 具体的には、「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化」「介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進」「寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進」となっている。


4.介護人材の確保・介護現場の革新

 「介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進」や「テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担減の推進」「文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減の推進」により、喫緊・重要な課題である介護人材の確保・介護現場の革新に対応することを目的とした改定が行われた。


5.制度の安定性・持続可能性の確保

 必要なサービスは確保しつつ、適正化・重点化を図ることを目的に改定が行われた。 各々のサービスや施設(通所系、多機能系サービス、夜間対応型訪問介護、居宅療養管理指導、介護療養型医療施設など)において、利用者の公平性の観点、サービス機能強化を図る観点、サービス提供の実態、事務負担軽減から、「評価の適正化・重点化」「報酬体系の簡素化」が図られた。


6.その他

 これまでの軸に該当しない、「施設系サービスにおいて、事故発生の防止と発生時の適切な対応のための担当者設置の義務化、安全管理体制の未実施減算、安全対策体制加算の創設」(介護保険施設におけるリスクマネジメントの強化)や「虐待の発生・再発を防止するための委員会開催、指針整備、研修の実施、担当者の設置」(高齢者虐待防止の推進)、「施設系サービス、短期入所系サービスにおける食費の基準費用額、現行1,392円から改定後1,445円への見直し」(基準費用額の見直し)の改定が行われた。

介護報酬改定の改定率について

出典:「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」(厚生労働省)



2021年5月10日掲載