出入国管理法の改正のポイント

改正出入国管理法の施行で、変わる介護現場

昨年の国会で成立し、いよいよ2019年4月1日から外国人労働者の受け入れ拡大を主な目的とした改正出入国管理法が施行される。この法律は日本国に入国し、または日本国から出国するすべての人について適用されるもので、つまり、外国人の入国、上陸、在留、出国、退去強制、日本人の出国、帰国を規定したものになる。

今回の改正は深刻な人手不足を背景に在留資格を新設し、外国人労働者の受け入れ拡大を目的としている。グラフにもある通り、日本の人口は減少傾向にあり、中でも生産年齢人口といわれている15歳から64歳の人口は2060年に4,418万人まで大幅に減少することが見込まれている。もう少し長期である2100年の人口をシュミレーションすると、日本の全人口は明治時代と同程度の4,000万人台へ減少するという推測も出ている。

人口減少イコール国力減とはいえないが、このままの推移を続けると日本の国際競争力は間違いなく低下する。そこで法律を改正し現在でも増え続けている外国人労働者をさらに受け入れやすくし拡大を図る狙いである。

日本の人口グラフ

外国人が日本に滞在中、生活したり、働いたりするための資格である在留資格は、現在「技能実習」「家族滞在」など既に28種類ほどあり、それぞれの資格ごとに日本で行える活動や滞在できる期間が定められている。今回の改正の目玉は、在留資格のうち「特定技能」が新設されたことである。特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向け資格で通算上限5年まで在留可能。特定技能2号は在留期間3年で要件を満たせば家族の帯同も可能としている。

特定産業分野とは、介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食の14分野。

単なる労働力確保ではないとしているが、外国人労働者は世界中でも取り合いになっており、限定的ながら家族の帯同まで踏み込んだ改正は、画期的で在留期間が長い台湾などに対抗する意味も含まれている。

 

変わる介護現場

変わる介護現場

人手不足が顕著となっている業種の中でも特に深刻なのが、介護事業である。要介護認定者は年々伸び続け、2018年11月には657万人に達している。そのため介護分野の有効求人倍率は、全職業(約1.5倍)を大きく上回る約4倍となっている。東京などの大都市圏ではさらに深刻な事態となっている。

介護職としての外国人労働者の受け入れは2008年度から始まっているが、外国人が日本の介護福祉士を目指して母国での厳しい基準に合格した人だけが日本での労働を許可されるという厳しいものだった。

今回の改正により、新たに「特定技能1号」「2号」を新設し、政府は5年間で最大約34万5,000人の受け入れを見込んでいる。うち、介護分野は当初5年間で5-6万人が入国すると見込まれている。

特に、政府の健康・医療戦略推進本部(本部長:安倍首相)はベトナム政府と介護人材の受け入れ拡大で合意している。親日で勤勉なベトナム人を介護人材として確保すると同時に、受け入れの環境整備を急ぐ計画である。1年以内に3000人、2020年夏までに1万人という数値目標を掲げている。そのため、政府は、日本語検定N3取得のための学習費用を支援し、高齢者の「自立支援」の手法も学べる優良法人を選定し、日本人と同様の給与水準を保証する。

 

課題山積みの外国人労働者

課題山積みの外国人労働者

日本の技能実習制度は、わが国の技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的にスタートした制度である。

研修内容や仕事内容など極めて厳格なルールがあるが、制度の趣旨を十分に理解せず、ビジネスとしか考えていない現地の送り出し機関や単なる外国人の仲介としか考えていない組合、制度自体の理解も薄い受入企業により頻繁に問題が露見している。

国会でも野党が取り上げた外国人労働者の失踪などは日常茶飯事で、受け入れる企業は大手であっても人権無視の労働環境もたびたび問題となっている。

介護業界は、とりわけ複雑なコミュニケーションを必要とし、命にも関わることから慎重な姿勢をとるところが多かったが、今後は背に腹を変えられない現場にて増えることが予想される。

はたして、6か月程度の研修を受けた外国人が、介護業界を担えるのだろうか?

介護の技能実習生には、日本語能力など一定の固有要件があるが、実際、N3程度の検定をクリアしていても、介護の現場での要介護者とのコミュニケーションが円滑になるまでには全く物足りなく、定型化した質問と答えしか出来ないのが現状である。受け入れ先の日本語教育などの環境整備はもちろんのこと、送り出し機関などとも連携して教育をしてゆく体制作りが必要となる。

 

2019年3月20日掲載