コンビニエンスストアは食品や雑貨など基本的な日常用品を小売するチェーン店。ほぼ年中無休で営業し、公共料金の支払いや宅配便の送付と受け取り、ATMの利用など、買い物以外でも立ち寄ることが多い、日常における身近な存在だ。特に出かけることが困難な高齢者にとっては、遠方のスーパーより近くのコンビニの方が利用しやすいことだろう。いっぽう高齢化社会が進み、単身の高齢者や高齢者夫婦などの世帯が増えていくことに対応し、コンビニも高齢者に向けたサービスを拡大させている。そこで、どのようなサービスがあるのか、大手3社について触れていこう。
地域の関わりを重視するセブン-イレブン
セブン-イレブン(株式会社セブン-イレブン・ジャパン)では、24時間営業して夜間も従業員がおり、各地域の拠点に店舗を構えているというコンビニエンスストアの利点を活かし、安全・安心な町づくりに取り組む「セーフティステーション活動」を行っている。各自治体と「見守り協定」を結び、対象の店舗は入口に「セーフティステーション実施店」と提示。女性や子供の駆け込みや高齢者の保護に対応している。実際に、徘徊する高齢者を保護して家族や警察に連絡したり、店舗のATMから高齢者が振り込め詐欺の被害に遭うことを未然防止するなどの例もある。2017年11月末の時点で「見守り協定」等を435の自治体と締結している。
また、セブン-イレブンでは食事を届ける「セブンミール」を提供しているが、この商品を届ける際に、高齢者の異変に気づいたら自治体に連絡するなどの対応をしている。今後この取り組みを全国に拡大し、高齢者が安心して暮らせる町づくりを目指す。なお、「セブンミール」には高齢者を意識した商品もあり、噛む力や歯が弱くなってしまった人でも食べやすいよう柔らかく調理し、塩分量や糖質を控えた宅配食が用意されている。
ローソンは介護事業とコラボ
家族に介護の必要性を感じたら、まずは地域包括支援センターや役所の専用窓口などに相談するのが一般的だろう。しかし、なかにはそういった窓口にいきなり相談することに気がひける人がいるかもしれない。その点、コンビニに相談窓口があれば、買い物ついでに気軽に立ち寄ることができる。そんな環境を実現したのがローソン(株式会社ローソン)だ。
同社では介助事業者と提携した「ケアローソン」を展開している。その1号店となる「ローソン川口末広三丁目店」(埼玉県)は、介護事業者がフランチャイズオーナーとして店舗を営業するという体制をとり、店内に高齢者の家族に向けた介護窓口を併設している。コンビニ自体は24時間営業だが、窓口は8:30~17:30の間営業し、ケアマネージャーが常駐する。店内には介護関連商品の取り扱いも行っている。
この「ケアローソン」は複数世代が交流できる「サロンスペース」も併設し、シニア向けのイベントを開催するなど、地域のコミュニティ機能を支援する場としても役立っている。「ケアローソン」は埼玉県をはじめ、千葉県、新潟県、大阪府、広島県、兵庫県、山口県、福岡県でも展開中だ。
ファミリーマートは薬が買える店舗を拡大中
ファミリーマート(株式会社ファミリーマート)は、「コンビニで薬を買えるようにしてほしい」というニーズに対応して、一般医薬品も取り扱う店舗を展開中だ。2012年に第1号店となる「ファミリーマート+薬ヒグチ淡路町店」(東京都千代田区)をオープンした。2015年にはドラッグストアを展開するヒグチ産業と、調剤薬局のファーマライズホールディングスとの3者で合弁会社「薬ヒグチ&ファーマライズ株式会社」を設立。各社の得意事業のノウハウを生かし、コンビニとドラッグストアや調剤薬局が一体化した店舗の多角化を進めている。店の広さや立地を考慮しながら、一般医薬品などを取り扱うドラッグストアを備えた店舗や、薬剤師がいる調剤薬局を併設する店舗を約20店展開している。ほかにも、各地域で親しまれているドラッグストアと組んだ、“ファミリーマートとドラッグストアの一体型店舗”は全国で約50店舗を数える。
これとは別に、ファミリーマートでは「メディカルフーズ(療養食)」を取り扱う店舗の拡大も進めている。塩分やタンパクの分量に配慮した食品や、食べやすさにこだわった「スマイルケア食」などのメディカルフーズの専用売り場を店内に設け、高齢者でも見つけやすいよう陳列の仕方まで気を遣う。2015年から病院内やその近隣を中心にこの形態の店舗を増やし、2017年1月現在は全国約70店舗まで拡大した。
ほかにもファミリーマートでは、高齢者向け宅配弁当の「宅配クック123」(株式会社シニアライフクリエイト)の配送網を活用した商品宅配を一部店舗にて実施している。「宅配クック123」が提供している高齢者向け弁当と共に、ファミリーマートの商品を配達するというサービス内容だ。
コンビニが進める移動販売
住民の高齢化や人口減少等が進む地方では、スーパーや商店などの買い物ができる店も減少が続いている。そうなると、高齢者など遠くまで出かけるのが困難な人にとっては死活問題だろう。そんな状況のなか、地域が抱える問題を考慮して、コンビニ各社が移動販売の営業を拡大している。
セブン-イレブンは、2011年から移動販売サービス「セブンあんしんお届け便」を実施。軽トラックを改良した移動販売車両を開発し、常温、弁当(20度)、チルド(5度)、冷凍(マイナス20度)の4温度帯に対応した、セブン-イレブンで販売する多彩な商品を積載することを可能とした。出店が難しい地域で買い物に不便さを感じている人のために移動販売を行い、地域住民の需要に応じて販売商品の調整を図っている。移動販売車は、茨城県の「常北下古内店」を皮切りに、2018年1月現在、全国1道27県にて55台が稼動している。
いっぽう、ローソンでは買物が困難なエリアの自治体と連携した、広島県や神奈川県などを含む28の都道府県の約81店舗(2017年10月時点)で移動販売を行っている。日用品や雑貨などの常温の商品を扱う車両と、チルドや冷凍など4つの温度帯の商品に対応した車両を、それぞれの地域のニーズに合わせて使い分けている。また、「ケアローソン」による移動販売も始まり、介護用品を取り扱う店舗も登場するなど今後の広がりが期待される。
そしてファミリーマートは、2011年の東日本大震災をきっかけに移動販売の営業を始めた。被災地や買い物が不便な地域で買い物を支援する移動販売車「ファミマ号」を導入し、被災地域の宮城県、福島県、岩手県を巡回した。2012年からは、軽自動車タイプの「ミニファミマ号」も導入。この車両は5つの温度帯販売設備を搭載し、おむすびやサンドイッチ、菓子、日用雑貨など幅広い商品を取り扱っている。現在これらの移動販売車が20台ほど稼働して、買い物が不便な地域への社会貢献を進めている。
2018年2月15日掲載