新型コロナウイルス感染拡大により、高齢者に対するワクチン接種が始まったとはいえ、各地で緊急事態宣言が発令されるなど、いまだ多くの人たちが不自由な生活を余儀なくされている。一般の人にとっても生活しづらい環境の中、特に一人暮らしの高齢者に対しては、見守り等の取組により、継続的に心身の状況や生活の実態を把握し、適切な支援につなげることが必要となっている。厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症の感染防止に配慮した介護予防・見守り等の取組の推進について」を繰り返し発信し、家にこもりがちな高齢者のケアの徹底を促している。
特に、1月の「介護保険最新情報」では、コロナ禍で接触を減らさざるを得ない状況が続く中、各自治体等における実際の見守りに関する取組事例を紹介することにより、地域の実情に合った介護予防や見守りを工夫して実施するよう呼びかけている。
都道府県単位だけでなく、各市町村単位でも独自で様々な取組を行っており、情報共有することによる新型コロナウィルス感染症の拡大防止に配慮した介護予防・見守り等の取組を広げることが重要である。
出典:厚生労働省老健局 事務連絡(2020年5月29日)資料より
オンラインの「通いの場」も
厚生労働省は、取組のひとつとして、WEBやアプリで確認することが出来る「オンラインの通い場」を用意している。 「通いの場」とは、地域に住む高齢者が定期的に集まり、様々なアクティビティを通じて仲間と楽しんだり、リフレッシュしたりと、日々の生活に活気を取り入れてもらうための取組である。その中でも、椅子に座った状態でもできるストレッチや運動、テキストやドリルを用いた頭の体操(認知機能訓練)、口の中を清潔に保つための口腔ケアなどの「介護予防」が大きな柱となっている。
「オンラインの通い場」は、コロナ禍でも居宅においても健康を維持するため、「地域がいきいき 集まろう!通いの場」として厚生労働省が特設WEBサイトやアプリ上に用意したものである。
WEBサイトやアプリでは、「自宅でできる体操(ご当地体操)」や「健康チェック」「食事管理」「脳を鍛えるゲーム」などがあり、動画で解説していることから、高齢者でも受け入れやすくなっている。
出典:厚生労働省「オンライン通い場」
各自治体の事例
栃木県さくら市
生活支援コーディネーターと認知症地域支援推進員が、一人暮らし高齢者宅等に電話し、健康状態、食事、買い物、誰 かと話す機会があるか等の生活状況を把握し、必要に応じて配食サービスや自宅でできる体操等の情報を提供。 さらに、支援が必要と考えられる高齢者については、別途、地域包括支援センターが訪問等により対応している。自宅で出来る体操をわかりやすく解説したチラシなども配布している。
埼玉県ときがわ市
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、定期的に開催していた「やすらぎの場」など集合して行う取組を中止。 地域包括支援センターで作成した「家でもできる健康体操」DVDを配布し活用していた中で、「みんなの顔が見たい。寂しい。」 「なかなかやる気にならない。」といった声が挙がってきたため、保健師がやすらぎの場参加者宅に訪問し、感染症対策で取り組んでいることや、自宅で実践している運動などテーマを決めて1分程度話してもらい、やすらぎの場参加者のビデオメッセージを作成。 動画の合間に保健師による介護予防体操・脳トレを差し込み、動画を見ながら体を動かすことができるよう工夫。配布の際に感想を伺い、次回のテーマや内容を決めている。参加者同士のつながりを感じてもらうことで、孤立感の軽減を図り、運動意欲の向上にもつながっている。
東京都文京区(とらいあんぐるタイム)
文京区社会福祉協議会が支援する住民主体の通いの場「かよい~の」の団体の一つである「とらいあんぐるタイム」は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、定期的に開催していた会場の利用が困難になり、公園での開催やオンラインでの取組など試行錯誤。緊急事態宣言解除後の令和2年6月から、公共施設を借りて、web会議システムを利用したビデオ通話、電話(音声のみ)と会場参加を組み合わせたハイブリッド型通いの場を開催。週に1回、自宅からのオンライン参加も含め15名程度が、感染防止対策を取った上で、貯筋運動やストレッチング、脳トレを行うとともに、おしゃべりなど交流も楽しんでいる。
その日の体調や気分にあわせて、会場参加とオンライン参加を選択でき、定期的に行っていた運動をコロナ禍でも続けられる。人に会うことへの不安や孤立感を解消し、高齢者のオンライン機器に対する苦手意識の克服にもつながっている。
出典:厚生労働省老健局「介護保険最新情報Vol.918」 東京都文京区の例
2021年6月12日掲載