障害者に関するマークを知ろう

街中には障害者に関するさまざまなマークが表示されており、それぞれのマークはきちんとした意味や役割を持っている。しかし、よく目にするマークであってもなんとなくわかっている程度で、正しい意味まで認識している人は少ないかもしれない。特に見慣れないマークであれば、何を示しているか知らない人もいるだろう。そこで、障害者に関するマークについて、いくつか紹介していこう。

 

世界共通の国際シンボルマーク

世界共通の国際シンボルマーク

一般的に「車イスマーク」などと呼ばれているこのマークは、障害者が利用できる建物や施設、交通機関であることを示す世界共通のシンボルマーク。正式名称は、「障害者のための国際シンボルマーク」という。1969年、世界各国で異なるデザインだったマークを統一のデザインにして、国や言葉が違っても障害者にわかりやすく案内できるよう、国際リハビリテーション協会(RI)により定められた。

このマークのある建物や施設、交通機関は、歩行が困難な人などの利用に配慮していることを示す。マークに車イスが表示されているため、車イス利用者のみに対する配慮表示だと思われがちだが、障害をもつすべての人に向けたものになっている。だから、車イスを利用していない障害者でも自分の乗用車に掲示してもいいし、マークが表示された駐車場等を利用してもかまわない。

この「障害者のための国際シンボルマーク」は、車イスマークの正しい理解と普及に努めている団体である「公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会」をはじめ、地方自治体や福祉介護関係団体、自動車用品店などで購入することができる。

 

盲人のための国際シンボルマーク

盲人のための国際シンボルマーク

青字に白い杖をもつ人をイメージしたこのマークも、街の信号機などで見かけることがあるだろう。これは、「盲人のための国際シンボルマーク」というもので、1984年、世界盲人連合により制定された世界共通マーク。視覚障害者の安全やバリアフリーに考慮した建物や設備、機器などに表示されている。信号機のほかには、音声案内装置や国際点字郵便物、書籍、印刷物などにこのマークが付けられている。

 

障害を持つ人が運転することを示すマーク

障害を持つ人が運転することを示すマーク

上の3つはよく知られている初心者マークや高齢運転者マーク。下の2つが障害をもつ人が運転していることを示しており、右が聴覚障害者標識(聴覚障害者マーク)、左は身体障害者標識(身体障害者マーク)。

身体障害や聴覚障害をもつ人でも自動車の運転免許を取得することができ、運転する場合は、その車両に専用のマークを表示する。「聴覚障害者標識(聴覚障害者マーク)」があれば、その車は聴覚障害者が運転していることを示し、「身体障害者標識(身体障害者マーク)」は、肢体不自由者が運転することを示す。

自分が運転しているときにこれらのマークを表示した車両に出会ったら、思いやりの心をもった対応に努めてほしい。なお、これらの車両に、やむを得ない場合を除いて幅寄せや割り込みなど行なった運転者は、道路交通法の規定によって罰せられることになる。また、聴覚障害者マークは対象者が運転する場合に表示しないと道路交通法違反となり罰せられるが、身体障害者マークの表示については努力義務となっている。

 

その他のさまざまな障害者に関するマーク

その他のさまざまな障害者に関するマーク

左から「耳マーク」(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)、「ハート・プラス・マーク」(ハート・プラスの会)、「ヘルプマーク」(東京都福祉保険局)

外見からわかりにくい障害を知らせるさまざまなマークがある。そのひとつが「耳マーク」だ。聴覚障害は外見からはわかりにくいため、目の不自由な人の「白い杖」のように、耳が不自由なことを示すこのマークを考案された。また、「ハート・プラス マーク」は、心臓、呼吸機能、じん臓、膀胱・直腸、小腸、肝臓、免疫機能など、外見からは分かりにくい体内に障害のあることを表し、近くでの携帯電話の使用を控えてほしいときや、電車の優先席を利用したいときなどに提示したりする。

また、東京都福祉保険局が作成した「ヘルプマーク」は、義足や人工関節を使用する人や、内部障害や難病を抱えている人、妊娠初期の人など、援助や配慮が必要な人を対象に配布されている。このマークを表示することで、電車やバスで席を譲ってもらうなど、援助してもらいやすくなるよう考慮されている。

これらのマークを提示されたら、その人が「聞こえない・聞こえにくい」こと、または体内部に障害があるなど、マークが示す意味を理解し、それぞれに合わせた対応を配慮したい。それにはマークが何を意味するか知っておくことが大切だ。内閣府のホームページで障害者に関するマークについて紹介されているのでチェックしてみよう。

【内閣府】障害者に関するマークについて(別ウィンドウが開きます)

 

介護する人が身に着ける「介護マーク」

介護する人が身に着ける「介護マーク」

資料提供:静岡県庁

介護していることを示す、静岡県で誕生した「介護マーク」というものがある。このマークが誕生するきっかけは、県が主催した認知症の家族を介護する人たちとの意見交換会であがったさまざまな困りごとだった。認知症の人は外見的には普通に見えるため、付き添いの家族が介護中であることが周囲に伝わりにくい。例えば、認知症の妻を介護する夫が、外出先のトイレで妻を介助するときや、女性用の下着売り場で買い物をするときなど、さまざまな場面で誤解や偏見をもたれることがあった。

このような困りごとを解消するために「介護マーク」が考案された。介護者はマークを身に着けることで介護中であることを示すことができ、周囲の人は事情がわかって配慮することができる。この取り組みは好評を得て、今では認知症に限定せず、精神疾患や発達障害などの介護も対象とするなど広がりを見せている。

 

全国への周知を進める「介護マーク」

全国への周知を進める「介護マーク」

また、この静岡県が考案した「介護マーク」は、厚生労働省でも全国的な普及を図り、各都道府県と市町村への周知を進めている。2011年4月から静岡県内でマークを配布し始めてから、2017年12月現在では全国の514市区町村がこのマークを取り入れている。

介護マークは、静岡県であればすべての市町村の役所・役場の窓口と、地域包括支援センターで申請して受け取ることできる。その他の県で導入しているところは、窓口に申請したり、ホームページからデータもダウンロードできるなど、自治体のよって配布方法が異なっている。在宅介護を支援する取り組みとして生まれた「介護マーク」がより多くの地域に広まることを願う。

 

2018年2月1日掲載